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鈴木ともこさん(漫画家・エッセイスト)
「ネバーエンディング・ストーリー」(1984年)

本の空想世界に入る楽しさ

 鈴木ともこさん(漫画家・エッセイスト)「ネバーエンディング・ストーリー」(1984年)

 

 初めて見たのは小学生の頃。画面からわくわく感を体中で味わった映画です。ファンタジーですが物語の世界にリアリティーがあって、自分の想像力で世界が広がる面白さに引き込まれました。

 主人公のバスチアンは内向的で本が好きな少年。いじめっ子から逃げる途中に入った本屋で、一冊の本に出合います。読む人の空想で成り立っている物語の世界「ファンタージェン」は、目に見えない「無」によって消されそうになっている。バスチアンは、自分と同い年くらいの勇士アトレーユが、その世界と女王の命を救うための冒険を追体験しながら成長していきます。

 岩を食べる大男や空飛ぶドラゴンなど、登場するキャラクターも魅力的。想像力がなければ夢や希望も生まれない。そのエネルギーこそ、生き抜く力になると思います。  好きなシーンは、バスチアンが学校の屋根裏部屋にリンゴやサンドイッチを持ち込み、毛布をかぶって夢中で本を読むところ。私も憧れてまねしていました。読書は想像力を育むきっかけになるし、ページをめくってグイッと物語に入り込んでいく楽しさを実感しました。

 先日、7歳の長男が物語を書き始めました。兄弟げんかがきっかけで生まれたキャラクターから着想がわいたらしく、次男も一緒に主題歌を作ったりして。それこそ想像力の遊びですよね。息子たちの「はてしない物語」を見るのも、最高に面白いです。

聞き手・根津香菜子

 

  監督・脚本=ウォルフガング・ペーターゼン
  製作=西独
  出演=ノア・ハサウェイ、バレット・オリバーほか
すずき・ともこ
 自らの体験をマンガ化した「山登りはじめました」シリーズ(KADOKAWA)のほか、年内に新刊を刊行予定。
(2016年9月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)