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10年以上前、ベルリンで一人芝居の公演をした時、目抜き通りをよく散歩しました。一歩路地へ入るとどこか影のある建物もあって、冷戦のことや、この映画のことを思い出しました。
科学者国際会議に出席するため、米からデンマークへ向かう客船に乗る、物理学者のマイケルと、秘書で婚約者のセーラ。しかしマイケルは突然、東ベルリンへ発つと言う。亡命を装い、米の核兵器の研究を成功させるため、高度な科学的知識のあるリント博士の研究を盗み出すというスパイ計画があったのです。
物語が始まるやいなや、本屋から届く謎の電報。そして秘密の暗号、東ベルリン、亡命……。次々に出てくるスパイ映画の「定番」にぐいぐいハマっていってしまうんです。
一番印象的なのは、秘密諜報(ちょうほう)員のグロメクを殺害するシーン。鍋を投げつけられても、ナイフで刺されてもなかなか死なない。最後はガスで殺され、指をぴくぴくさせているところなんか芸が細かいよね。カット数が多く、時間をかけて丁寧に撮っているのがわかります。
ヒチコックは邪魔者の使い方がうまいなぁと思います。それぞれに事情を抱えている生身の人間を使うから、愛着がわく。そういう人々が僕の芝居のネタにも通じているんじゃないかな。この映画のどの役をやりたいかと言われたら、やっぱりグロメク。米へ亡命を夢見るポーランド人のおばさんも魅力的だし、リント博士もいいですね。
聞き手・秦れんな
監督=アルフレッド・ヒチコック
製作=米
出演=ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュースほか いっせー・おがた
1952年生まれ。ホームページでイラストを更新中。来年公開の映画「沈黙 サイレンス」(マーティン・スコセッシ監督、米)に出演。 |
イッセー尾形さん直筆サイン入り色紙プレゼント!
2016年10月6日16時締め切り
たくさんのご応募ありがとうございました。 |