実話を元にしています。1931年の豪・西オーストラリア州が舞台。白人と先住民のアボリジニーの間に生まれた子どもは親から引き離され、保護施設に隔離されていました。召使や労働者にするため「教育」する場所です。そこに入れられた主人公の少女モリーが、妹たちと逃げ出して3人で故郷を目指します。
モリーは14歳。10歳のいとこと8歳の妹を連れて、はるか1500マイル(2400キロ)を歩きます。3人を捕まえるため政府側の人々は足跡をたどろうとしますが、モリーは石の上を歩くなど、足跡がつかないように進んでいきます。先住民の英知ですよね。
途中、いとこは自分の意志でモリーたちとは離ればなれに。みんなで戻りたいと思っているモリーは、いとこの元に引き返します。でも一緒にはなれなくて。
困難にもめげないモリーの目の強さが心に残りました。彼女のアイデンティティーは故郷にあって、そこに必死に戻ろうとするんです。
僕の父はアイヌ民族で、母は日本人。自分がすごく愛しているアイヌ文化を多くの人に知って欲しいと思っているし、講演などでアイヌ文化の重要性とか格式張ったことを話すこともあります。でも、根本はモリーのように自分たちらしく生きたいというシンプルなことなんですよね。
映画の最後に、おばあちゃんになった実物のモリーが登場します。アイヌのおばあちゃんたちも、裸足で乗り越えてきたことがあったのかなあと思いました。
聞き手・土田ゆかり
監督=フィリップ・ノイス
製作=豪
出演=エバーリン・サンピ、ローラ・モナガン、ティアナ・サンズベリーほか ゆうき・こうじ
1964年生まれ。アイヌ文化の継承と創造に取り組む「アイヌアートプロジェクト」代表。フォトエッセー「アイヌプリの原野へ」の挿絵(版画)なども手がける。 |