米アリゾナ州に住む家族6人が、黄色いワゴン車に乗り込んで、9歳の娘オリーブちゃんの美少女コンテスト出場に向け、約1200キロ先のカリフォルニアを目指すロードムービーです。
10年くらい前、パッケージが可愛いな、なんて軽い気持ちでレンタルしました。以来、何度も見ています。
作品全体を通して、カメラのアングルが面白いんです。つかず離れずの微妙な距離感で、問題だらけの家族を追う。アメリカの強い太陽にさらされて、少しあせたような色づかいもきれいです。
コンテスト前夜、不安を漏らすオリーブちゃんを、おじいちゃんが励ますシーンが印象的。「本当の負け犬ってのは、負けるのが怖くて闘わないやつだ」。僕も、どんな仕事でも出し惜しみせず、ずっとそういう意識で仕事をしてきた。挑戦を続ける限りは負けじゃないって思うから、このせりふはうれしかったな。
旅の途中、ワゴンのギアが故障して、しぶしぶ皆で車を押すシーンも面白い。皆だんだん上達して、バラバラだった家族が、終盤では息がぴったり合ってくる。思わずクスリと笑ってしまいます。
映画は最後までハプニング続きだし、結局誰の願いもかなわない。でも、見終わるとなぜかスッキリする。帰る場所があり、受け入れてくれる家族がいる。そんな記憶って、人生をずっと支えてくれますよね。勝ちとか負けとかでは計れない、日常がいとおしくなるような映画です。
聞き手・中村茉莉花
監督=ジョナサン・デイトン、バレリー・ファリス
製作=米
出演=アビゲイル・ブレスリン、グレッグ・キニアほか かごしま・まこと
1967年生まれ。福岡を拠点に国内外で活動。作品集「鹿児島睦の器の本」(美術出版社)が販売中。 |