舞台は80年代の米ニューヨーク。この時代のリアルなアートシーンを背景に、ペンキやスプレーなどを使った「グラフィティアート」の先駆者として知られる画家ジャンミシェル・バスキアの生涯を描いた映画です。
15年くらい前に偶然見てからもう100回は見ています。絶妙な場面で流れるジャズや、ドレッドヘアにスーツを着たバスキアのファッションなど、僕の大好きなものがたくさん詰まっている。
アーティスト志望のバスキアは、とにかく有名になりたかった。恋人のジーナと暮らしながら絵を描き続けていたある日、パーティーで出会った美術評論家に見いだされ、名門グループ展に参加することに。一躍人気者になったバスキアはアンディ・ウォーホルら有名人と交流を深める一方で、変化していく人間関係に寂しさやむなしさを募らせていきます。彼の純粋さや優しさが行動や会話の端々から伝わってくるんです。
僕は高校卒業後、地元の大学で美術を学んだことがあったのですが、情熱が続かずにすぐやめてしまった。だから、この映画が僕の学校のような感じなんです。バスキアの自由奔放さは「アートってこれでいいんだ!」と理屈っぽく考えがちな僕の視野を広げてくれ、友人ベニーの言葉からは、多くのことを気づかされます。「嫌われても続けろ。どのみち嫌われるしな」なんて、人生を教えられているみたい。バスキアの存在はずっとそばにあります。
聞き手・秦れんな
監督=ジュリアン・シュナーベル
製作=米
出演=ジェフリー・ライト、クレア・フォラーニ、デビッド・ボウイほか うりゅう・たろう
ウェブサイト・資生堂「花椿」連載コラムのイラスト、銀座三越や商業施設「ルミネ」のウィンドーディスプレーなどを手掛ける。 |