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開田裕治さん(イラストレーター)
「ゴジラ」(1954年)

「怪獣の世界」とつながる感覚

開田裕治さん(イラストレーター) 「ゴジラ」(1954年)

 「怪獣がいる世界」が好きで、子どもの頃からよく夢を見ました。街を歩いていると怪獣映画の看板が掛かった映画館がある。看板を見ていると、その絵の「怪獣の世界」に吸い込まれちゃう。部屋の窓を開けたら街にたたずむ怪獣がいた、という夢もあった。怪獣がいる世界と僕らの現実世界がつながっているような、リアルな感覚が好きなんです。

 初代ゴジラはそのだいご味が存分に味わえる。戦後9年の時代に、戦争を経験した人らが作っていますから。街が壊され、人々が逃げ惑う真実味が半端ない。

 原水爆という科学の負の一面が呼び覚ました怪獣ゴジラを、また別の科学の力で倒すというお話です。ただ、ゴジラに悪意はない。戦争のほかに自然災害を象徴していて、どう付き合うか、という存在でもある。この作品の後、毎年のようにゴジラ映画が作られますが、台風などの災害への心構えがある日本だからこそ、毎年ゴジラが現れては去る、という映画が成立したんだと思います。

 ゴジラは戦争や災害と同じ「破壊する存在」で、決して格好いいものとして作られてはないはず。でも結局今見ても格好いいんです、これが。だからエンターテインメントなんです。シビアな含蓄があってもそれだけじゃない。わくわくして胸躍る、優れた娯楽映画なんですね。

 今回描いたのは僕が創作した怪獣。高層ビルの新宿副都心なんかより、4、5階のビルが建つ下町の方が、リアリティーが出るんですよ。

聞き手・安達麻里子

 

  監督=本多猪四郎
  特殊技術監督=円谷英二
  出演=宝田明、河内桃子、平田昭彦、志村喬ほか
かいだ・ゆうじ 
 「怪獣絵師」の異名を取る。9月24日(日)まで、福島・やぶき観光案内所で個展「ウルトラセブンの世界展」、福島空港で「ゴジラ」の3人展。
(2017年9月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)