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早川鉄兵さん(切り絵作家)
「ジャングル・ブック」(1967年)

心弾んだ 動物たちの世界

早川鉄兵さん(切り絵作家) 「ジャングル・ブック」(1967年)

 「晴れた日は外で遊ぶ」という教育方針で育った僕は、自然と動物が大好きな子でした。雨の日は、家でハサミの練習のために3歳で始めた切り絵をしたり、ディズニー映画のビデオを見たりして過ごしていましたね。この作品は、登場する動物の多さと、みんなが楽しく歌って踊る光景に心弾ませたのを覚えています。動物と会話し、仲良く遊ぶ少年モーグリが本当にうらやましかった。

 黒ヒョウに拾われたモーグリがオオカミ一家と幸せに暮らしているところに、人間嫌いのトラが森へ戻って来ることから、冒険の旅は展開します。思索は必要なく、素直に楽しめる内容です。ただ、道中で出会う意地悪なヘビや人に憧れるサル、陽気で気ままなクマなど、森の様々な住人の描写が、さすがはディズニー。一つ一つのキャラクターが適役のうえ、体のフォルムや筋肉の付き方、しぐさ、動きの細部に至るまでの観察がよくなされています。デフォルメされた部分と実物とのバランスが絶妙ですね。自身の作品づくりで、特に気を配る部分だからこその視点かも知れません。

 普段のモチーフは、僕が住む山あいの生き物たちですが、この絵は物語の発端のトラを中心に、登場する全ての動物を描きました。自分というフィルターが、どのように動物を見ているかが伝わるとうれしいです。単に動物を描くのではなく、一つの命の周りには他の生命が存在し、自然が息づき、巡る。その表現の起点がこの映画です。

聞き手・井本久美

 

  監督=ウルフガング・ライザーマン
  脚本=ラリー・クレモンズ、ラルフ・ライト
  原作=ラドヤード・キプリング
  製作=米
はやかわ・てっぺい 
 1982年生まれ。滋賀県米原市を拠点に活動。プロジェクションマッピングなどの大型作品も手がけ、新しい切り絵表現を模索する。
(2017年9月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)