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竹田嘉文さん(イラストレーター)
「13デイズ」(2000年)

核戦争の危機 今も起こりうる

竹田嘉文さん(イラストレーター)「13デイズ」(2000年)

 一歩間違えば核戦争が起きかねなかった、1962年のキューバ危機の実話に基づく社会派ドラマ。僕が現代史に興味を持つきっかけになった作品です。

 ケビン・コスナー演じる大統領特別補佐官、ケネディ大統領、その弟のロバート司法長官の3人を中心に、キューバに持ち込まれた核ミサイルを撤去させるまでの13日間の攻防が描かれています。印象的なのは、国連安全保障理事会のシーン。米国大使が、核ミサイルの持ち込みを認めないソ連大使に、その有無を「イエスかノーか」で答えるよう迫ります。映画的な演出も手伝って痛快でした。

 初めて見たのは学生のころ。映画監督志望で映画を見まくっていた当時、もっと興奮や感動した作品があったのに、今回これを選んだのは自分でも意外です。最近の世界情勢の影響かもしれません。中距離弾道ミサイルなど、ニュースで聞き覚えのある単語が出てきてハッとさせられます。キューバ危機は決して古い歴史ではなく、僕らが生きている時代でも起こりうることなんだな、と。

 イラストは、メインの3人と、米国大使、海上封鎖を提案する国防長官を描きました。作中で「正義」として描かれている5人です。正直、米国を正義、ソ連を絶対的に悪とする描写はどうなのかなとも思います。だけど、映画としてエンターテインメントに徹することで間口が広がり、歴史を学ぶきっかけにもなる。そういうのも意義がありますよね。

聞き手・星亜里紗

 

  監督=ロジャー・ドナルドソン
  製作=米
  出演=ケビン・コスナー、ブルース・グリーンウッドほか
たけだ・よしふみ 
 1982年生まれ。名古屋市出身。雑誌「BRUTUS」や作家吉田修一のエッセー本の挿絵などを手がける。
(2017年12月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)