締め切りの迫った脚本家ベンスンが、フランス革命の記念日「パリ祭」をテーマに脚本を書くことを思いつきます。それをタイピストのガブリエルが手伝って、そのうち2人の間に恋が芽生えるロマンチックコメディー。
僕が心を奪われたのは、パリの風景です。サクレ・クール寺院、ブーローニュの森、そしてベンスンが泊まるホテルの部屋から見えるエッフェル塔。
封切りで見て以来、何回も映画館に通いました。絵の勉強のため、広島からパリに行ったのは、それから5年後です。以前から考えてはいましたが、この映画をきっかけに、行きたいという気持ちが強くなったんです。
映画の中のパリ祭では、街の広場で人々が楽しそうに踊っているシーンが出てきます。現在は分からないですが、僕が行った50年ほど前にも同じような光景がありました。住んでいたパリ郊外のレ・リラという下町の雰囲気がある所で、じいちゃんもばあちゃんも踊っていました。僕は踊れないからフランスパンをかじって見ているだけでしたけどね。
パリのあちこちで絵を描いて、映画に出てくるレストランでの優雅なシーンはブーローニュの森だと思いますが、そこでも描きました。あこがれの世界にいるから大満足でしたよ。
今回、イラストを描くにあたって改めて見たことで、美を求めてフランスに行った若いときの血潮のようなものを思い出しました。
聞き手・土田ゆかり
監督=リチャード・クワイン
製作=米
出演=ウィリアム・ホールデン、オードリー・ヘプバーンほか
おおまえ・ひろし
1937年生まれ。癒やしがテーマの風景画を描く。一方、50年ぶりに、2015年から広島の被爆体験を元にした絵画を手がける。 |