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舟越桂さん(彫刻家)
「さすらいの青春」(1966年)

幻想的な映像で男同士の友情描く

舟越桂さん(彫刻家)「さすらいの青春」(1966年)

 光が滲(にじ)んだり乱反射したりする幻想的で美しい映像と、魅力的な役者が出ていることで好きな作品です。見たのは高3の頃。最近DVDが発売されたので購入しました。手元に置いておきたいとずっと思っていたんですよ。

 フランソワ、モーヌ、フランツの3人の男の友情と恋愛の間で起こる行き違いや悲劇が描かれていて、ちょっとシェークスピア的です。説明が少ないので、最初は時系列がよくわからなくて、2度くらい映画館に見に行ったんじゃないかな。時間がすーっと流れていかない構成も印象的でしたね。

 フランスの田舎が舞台。教師の両親と寄宿学校で暮らすフランソワは、転校してきた大柄で力強いモーヌに憧れを抱き、仲良くなります。ある日、モーヌは失踪し、3日後に戻ってくると、迷い込んだ森での体験をフランソワに話すんです。城のような屋敷で開かれていたフランツという青年の不思議な婚約パーティーに参加し、フランツの姉イボンヌと恋に落ちたと。それ以来、モーヌは彼女との再会を夢見て、つかれたように行方を追います。モーヌ役のジャン・ブレーズの顔が端正で美しいんですよ。イボンヌ役のブリジット・フォッセーは、映画「禁じられた遊び」の子役だった人。上品で柔らかい美人です。この2人が僕には魅力的でしたね。

 映画は浪人生の時が一番見たかな。この映画のように、全部を説明しないことで考える余地や余韻が残る。それは彫刻や絵にも通じると思います。あえて「作りかけ」で終わるのもありなんだろうなあ。

聞き手・牧野祥

 

  監督・脚本=ジャン・ガブリエル・アルビコッコ
  製作=仏
  出演=ブリジット・フォッセー、ジャン・ブレーズ、アラン・リボルほか
ふなこし・かつら 
 1951年生まれ。東京芸術大大学院在籍中に作家活動を始める。その後、現在の木彫半身像というスタイルを確立。版画も手がけている。東京造形大客員教授。
(2018年1月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)