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青山邦彦さん(絵本作家)
「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年)

緻密な作り込みが魅力

青山邦彦さん(絵本作家)「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年)

 「ハリー・ポッター」全シリーズの本を、子どもが小学生の6年間、毎晩寝る前に何度も読み聞かせをしていたんです。それで関心を持ち映画を見ました。

 生まれつき魔法使いとして偉大な能力を備えた主人公の少年ハリーが、不幸な事情で両親を亡くし、人間界で暮らしている。11歳になるとホグワーツ魔法魔術学校への入学が許可され、ハリーの過去が少しずつ明らかになっていきます。

 「緻密(ちみつ)な作り込み」が映画の魅力です。以前、建築の仕事をしていたので、造形に注目して見ました。ほうきなどの小道具までこだわりが詰まっている。ピンクの傘で、れんがに触れると現れる「ダイアゴン横丁」の町並みは、本物の町に入ったような感覚に陥って、思わず上空から構造を見てみたくなりました。町や城など数カ月にわたり、実際に模型を作った上で、建てたんですって。

 平面図や模型を参考に魔法魔術学校のあるゴシック様式のホグワーツ城を絵にしました。ハリーたち生徒が食事をする大広間は手前にある建物の中。寸法通りに断面を切って見せる工夫をしました。移動手段の動く階段が、いくつも存在するその塔の大きさに感動しました。どこに何があるか、映画との相違を楽しんでもらえたらうれしいです。

 きっと作り手が楽しんでいるから、あの不思議な世界を表現できるんだと思います。原作者のJ・K・ローリングさんを含め、製作スタッフに敬意を表してこの絵を描きました。

聞き手・佐藤直子

 

  監督=クリス・コロンバス
  原作=J・K・ローリング
  製作=米
  出演=ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンほか
あおやま・くにひこ 
 1965年生まれ。建築設計事務所勤務を経て、絵本作家となる。著書に「大坂城 絵で見る日本の城づくり」(講談社)など。
(2018年2月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)