現代か過去かよくわからない西欧を舞台に、人間の生のありさまを描く39のストーリーが映し出されます。
夕食時にワインの栓を開けようとして心臓発作を起こして絶命する男性の話や女主人ロッタのカフェに長年通い続ける年老いた常連客の話とか。日常で起こる大小さまざまな出来事の繰り返しなのかと思っていると、現代のバーに18世紀のスウェーデン国王と騎馬隊が現れる。
予告編か何かで、全てがスタジオで撮影されたものだと知って、日本での劇場公開を楽しみにしていたんです。考え抜かれたアングルや映像の美しさが、感覚的に好きだなあって思いましたね。
あと、一見突飛(とっぴ)だけどこの映画に登場する人たちのたたずまいに違和感がなくて普通に見えたんです。
描いたこの2人は、シーンの3分の1ぐらい登場する面白グッズの販売員、サムとヨナタン。取引先へ商品を売り込みに行けば全く売れないし、納品の代金を回収に行けば払ってもらえない。物事はうまく運ばないけれど、結果にたどり着くまでの過程に一生懸命さと愛らしさを感じました。
僕の仕事は「世の中を少し彩るもの」で、なくてもいいものかなと思うんです。彼らと一緒かなって。僕のほうはもう少し抜かりなく仕事をしていますけどね。この映画は些細(ささい)なことを「わざわざ」描写して、人間の本質をきめ細かに表現している。僕もそういう絵を描きたいなと思いました。
聞き手・尾島武子
監督・脚本=ロイ・アンダーソン
製作=スウェーデンほか
出演=ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロムほか
のりたけ
モノクロの線画を軸にしたイラスト等を手がけ、国内外で活動。7月19日から東京・お台場の日本科学未来館で開催する「デザインあ展」に参加。 |