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丸山清人さん(銭湯絵師)
「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」(1977年)

風にたなびく 元妻の思い

丸山清人さん(銭湯絵師)「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」(1977年)

 山田洋次監督の作品が好きなんだよ。ほとんど見ているね。人の絆が描かれていて、生きる元気がもらえる。一連の作品を通して、私も生涯、家族や友人、仕事仲間との絆を大事にしようと思った。

 この作品も絆がテーマ。高倉健演じる男は北海道・網走刑務所から出所した日、倍賞千恵子演じる元妻にはがきを出す。もし自分を待っていてくれたら、家の前に黄色いハンカチを掲げてねって。自宅がある夕張へ、戻ろうか戻るまいかの葛藤―。服役中、愛妻に対し自ら別れを切り出した手前、なかなか素直になれない。でも会いたいという男心に、ドキドキする。夫婦の絆を取り戻せるか。

 そこにいい具合に絡むのが武田鉄矢と桃井かおり。それぞれ恋人と別れ、傷心の若者を演じた。車で共に旅をする中、若者2人が弱気の高倉健の背中を押す。「行ってみなきゃわからないじゃないか」って。その場面が何ともいえない。

 旅の途中、武田鉄矢が、たこ八郎が演じるヤクザ風の男の車を蹴り、そそくさと逃げていくんだ。そんな、笑いを誘うような仕掛けもあってね。山田洋次監督は、所々で笑いをとった後、じわじわと盛り上げてから、感動させるんだよな。

 北の大地を舞台にしたのは、雄大な景色があるからかもしれない。私は、銭湯の背景に富士山などを描くことが多いから、おのずと風景に目が行く。緑の大自然に、黄色は映えるよね。この絵に描いたのは風にたなびくハンカチ。幸せの象徴です。

聞き手・石井広子

 

  監督・共同脚本=山田洋次
  原作=ピート・ハミル
  出演=高倉健、倍賞千恵子、桃井かおり、武田鉄矢、渥美清ほか
まるやま・きよと 
 1935年生まれ。60年以上銭湯絵師を続ける。9月21日~10月2日、東京・国立市のギャラリービブリオで4回目の個展を開催。
(2018年8月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)