山田洋次監督の作品が好きなんだよ。ほとんど見ているね。人の絆が描かれていて、生きる元気がもらえる。一連の作品を通して、私も生涯、家族や友人、仕事仲間との絆を大事にしようと思った。
この作品も絆がテーマ。高倉健演じる男は北海道・網走刑務所から出所した日、倍賞千恵子演じる元妻にはがきを出す。もし自分を待っていてくれたら、家の前に黄色いハンカチを掲げてねって。自宅がある夕張へ、戻ろうか戻るまいかの葛藤―。服役中、愛妻に対し自ら別れを切り出した手前、なかなか素直になれない。でも会いたいという男心に、ドキドキする。夫婦の絆を取り戻せるか。
そこにいい具合に絡むのが武田鉄矢と桃井かおり。それぞれ恋人と別れ、傷心の若者を演じた。車で共に旅をする中、若者2人が弱気の高倉健の背中を押す。「行ってみなきゃわからないじゃないか」って。その場面が何ともいえない。
旅の途中、武田鉄矢が、たこ八郎が演じるヤクザ風の男の車を蹴り、そそくさと逃げていくんだ。そんな、笑いを誘うような仕掛けもあってね。山田洋次監督は、所々で笑いをとった後、じわじわと盛り上げてから、感動させるんだよな。
北の大地を舞台にしたのは、雄大な景色があるからかもしれない。私は、銭湯の背景に富士山などを描くことが多いから、おのずと風景に目が行く。緑の大自然に、黄色は映えるよね。この絵に描いたのは風にたなびくハンカチ。幸せの象徴です。
聞き手・石井広子
監督・共同脚本=山田洋次
原作=ピート・ハミル
出演=高倉健、倍賞千恵子、桃井かおり、武田鉄矢、渥美清ほか
まるやま・きよと
1935年生まれ。60年以上銭湯絵師を続ける。9月21日~10月2日、東京・国立市のギャラリービブリオで4回目の個展を開催。 |