小学1年か2年の頃、友達と近所の映画館で見ました。おそらく初めての映画体験です。幕が開いたら、突然大画面にゴジラの足がバーンと出てきた。何よりその巨大さに度肝を抜かれました。
舞台は、世界各地で流星が見られ、1月なのに日本脳炎が発生するほどの暖冬が続く日本。最近の異常気象を思わせます。そこに日本に向かう途中、飛行機を爆破されたセルジナ公国の王女が金星人に乗り移られて日本に現れ、キングギドラによる地球滅亡の危機を訴えます。それに呼応するようにゴジラ、ラドンが復活。黒部ダム近くに落ちた隕石(いんせき)から誕生したキングギドラとともに街を破壊する。人間は何もできない中、インファント島の2人の小美人に呼び寄せられたモスラがゴジラとラドンを説得して、3怪獣が力を合わせてキングギドラと戦います。
当時、僕の家は東京都大田区の運送屋。おやじのトラックの助手席から見た巨大な京浜工業地帯や羽田空港に降りてくる飛行機が印象に残っています。僕が巨大な画面に大きな生き物を描くのは、この時代の影響かもしれません。どんな生き物にも必ず描くうろこは、日本の湿潤な風土感を表現しています。
この絵の暗闇は、王女が落ちた「次元の裂け目」です。その中で小学生の僕と半世紀を経た僕の目が一つになっています。小さいながらに、この世には計り知れないものがあると思い知らされた、それが今も僕の作品制作の原動力になっている気がします。
聞き手・石井久美子
監督=本多猪四郎
特殊技術監督=円谷英二
出演=夏木陽介、小泉博、星由里子、若林映子、ザ・ピーナッツほか
おかむら・けいざぶろう
1958年生まれ。多摩美術大教授。来春、銀座・コバヤシ画廊で個展を予定している。 |