カストロ政権下のキューバで、作家で同性愛者の主人公レイナルドが、政府から弾圧や迫害を受けながらも強く生きた物語。実在の人物で、自伝がもとになっています。
僕は、アトリエでじっと絵を描いているときに違う国や時代のことを想像して、豊かになる気がする。同じように、この映画を見ると、キューバに行ったことはないのに、映像や話の流れ、役者の動きなんかで、行った気になる。映画に出てくるホモセクシュアルの男たちは、ストレートの僕でも、美しいと思う。そういった感覚って言葉で説明しても分からない。この映画でしか知り得ない世界を知ることができたんです。
レイナルドは、大学に通いながら作家を目指し、同性愛に目覚めていく。1作目は社会で評価されたが、次第に政府の弾圧を受けて、反逆者と見なされてしまいます。ナイーブに見えて強い。警察に捕まってもあっさり脱獄し、さらに逃げようとタイヤを浮輪にして海を渡る。大胆で「絶対生き残る」っていう生命力がある。エネルギーの強い人が、何かを成し遂げるんだなって思います。
絵に描いたのは、青空の下でレイナルドがタイプライターを打つところ。好きな場所で好きなことをやるって、表現者にとって夢みたいだな。カラッと明るい中に、どこか湿り気もあるキューバの空気感を出したくて、発色がいい水彩で。普段は油彩を描いていて、実は水彩って20年ぶりでした。
聞き手・笹木菜々子
監督=ジュリアン・シュナーベル
製作=米
出演=ハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネス、ジョニー・デップほか
くわくぼ・とおる
1978年、神奈川県座間市生まれ。10月8日まで、渋谷ヒカリエ8階の8/ART GALLERY/Tomio Koyama Galleryで個展を開催中。 |