「死」は人類にとって恐れるものであり、出来れば避けたいもの。だけど、人間になりたいロボットからしてみたら、実は死は憧れで、むしろ人間らしさを担保する大事な要素になるわけです。不死に悩み、死を望む。そんなロボットの悲哀と、永遠には生きられない人間の限界みたいなものに気付かされます。
舞台は近未来。ある一家に購入されてやってきた家事用ロボット、アンドリューが生きた200年間が描かれます。最初は普通に家事をしていたアンドリューが、知性に目覚め、次第に人のように自身の自由の権利を訴える。そして改造を重ねて姿まで人間そっくりになるんです。でも、そうしている間にも時間が経ち、周りの愛する人たちはどんどん年を取って死んでいく――。
高校生の頃にパッケージだけを見てレンタルしたので、思わぬ内容でしたね。だけど、子どもの頃から「時間の経過」に対し、恐れにも似た気持ちで関心があったので、200年という一人の人間が生きられない時間を描く作品に、胸を打たれました。誰かが死んで悲しいとか、よかったみたいな喜びはないです。ただ、長い時間の中では人が死んだり生まれたりするわけで。人や心の移り変わりを見届ける無常さに、普段映画で泣くことはない僕ですが、泣くのに一番近い感情を抱きました。アンドリューは、死というものが権利っていう発想。それが意外と心の奥底に響いていたんだと今になって思います。
聞き手・町田あさ美
監督=クリス・コロンバス
原作=アイザック・アシモフ
製作=米
出演=ロビン・ウィリアムズほか
ふるいち・のりとし
1985年生まれ。代表作に「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社)など。初小説「平成くん、さようなら」(文芸春秋)が発売中。 |