ジョージア(グルジア)の画家ニコ・ピロスマニ(1862~1918)の人生を描いた物語。30年以上前に東京・神保町の岩波ホールで見て衝撃を受けました。ビデオも持っているけれど、公開されるたびに見に行っています。
ピロスマニの絵は誰に習ったのでもない自己流。僕も絵の学校を出ていなくて、突然24歳の時に描き始めた。そういうところにも共通点があって、ひかれてやまない。熱情みたいなものがこの人からは感じられるんです。
ピロスマニは、世俗的概念がとぼしく、友人と乳製品の店をはじめるが、故郷の姉夫婦に粉をだまされたり、貧しい人に商品をあげたりして店を閉めてしまう。それからは、町の中を放浪して、店の看板や壁に飾る絵を描いて、ワインやパンを得てくらした。彼は町の人に「伯爵」と呼ばれ半分馬鹿にされながら、半分愛されていたんですね。人の評価は気にせず、孤高にひたすら絵を描き続けた。それがむなしいけれど美しい。この映画を見て、自分もこういう風に生きられたらいいのだがと思いました。
絵は、ジョージアの首都トビリシにある国立美術館で、僕がピロスマニの絵を見ているところ。右の絵の女性は、彼が恋した女優のマルガリータ。2人は貧しい画家が女優にバラの花を贈る歌「百万本のバラ」のモデルになりました。ジョージアで彼の絵を見るのがずっと夢で、今年初めて訪れた時、宝物に会った気がしました。
聞き手・清水真穂実
監督・共同脚本=ギオルギ・シェンゲラヤ
製作=ジョージア
出演=アブタンディル・バラジ、ダビト・アバシゼほか
2月に版画集「ButとOr」(BL出版)を刊行予定。2月末まで、東京・新国立劇場で「『日本芸術文化振興会ニュース』ささめやゆき表紙画展」を開催中。
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