ほとんどが家の中での会話劇で、まるで舞台を見ているようなコメディー映画です。仏映画ならではの上品な雰囲気にブラックユーモアが効いています。
パリで出版社を経営するブロシャンは、毎週、仲間たちと「バカ」「奇人」を招待しては笑い物にするという悪趣味な晩餐会(ばんさんかい)を開いています。ある日、マッチ棒でエッフェル塔などの模型を作ることを趣味にする税務署勤めの男ピニョンを見つけ、晩餐会に招くのですが、ブロシャンは当日ゴルフで腰を痛めてしまい、晩餐会はキャンセルすることに。しかしその夜、彼の家にやって来たピニョンのおせっかいによって、腰は悪化し、夫婦仲は裂かれ、家の財産まで失いそうになるなど、次々と災難に見舞われます。でも、ピニョンは、人のために動いているだけで、すごく優しいんです。結局はバカをバカにしていた側が人生を学ぶことになり、ジーンとする場面も。
僕はどちらかというと晩餐会に招待される「奇人」側だと思います。自分の好きなことや作品について説明していると、話が止まらなくなる。そんな時、マッチ棒の模型について話し続けるピニョンのことを思い出すんです。子どもの頃から空想好きで、18歳まで自作の人形遊びに没頭していました。それが仕事の原点なのですが、家族は心配していましたね。この通り、人と話すのも苦手。うまくいかないことがあると絵を描きます。模型作りに救われたピニョンの気持ちはよくわかるんです。
聞き手・秦れんな
監督・脚本=フランシス・ベベール
製作=仏
出演=ジャック・ビルレ、ティエリー・レルミットほか
あじろ・こうすけ
平面、立体、アニメーションなど様々な方法で空想世界を表現している。11月に絵本「サーベルふじん」(小学館)を刊行。 |