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上路ナオ子さん(イラストレーター)
「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)

中年に元気をくれる友情映画

上路ナオ子さん(イラストレーター)「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)

 1軒のパブで1パイント(約500ミリリットル)のビールを飲み12軒をはしごする。イギリス郊外の街で、5人の男たちが高校生活最後の日にそれを「ゴールデン・マイル」と名付けて挑む。でも酔い潰れたり、大麻でハイになったりする仲間が出て挫折。再挑戦するため、中年になって街に戻ってきます。思い出を振り返りながらパブ巡りをしますが、次第に街の様子がおかしいことに気がつきます。やがて街の人が宇宙人に操られていることが判明。人間を支配しようとする宇宙人と戦いながら最後のパブ「ワールズ・エンド」を目指すSFコメディーです。コメディーですが、ヒューマニティーにあふれた友情映画とも思います。

 主人公のゲイリーは本当に最低なやつ。平気でうそをつくし、友達を振り回すし、アルコール中毒。でも彼の友達は最後までゲイリーを見捨てないんです。宇宙人に追われても最後まで彼について行きます。人間って不完全な存在だけど、みんなどこかでがんばっている。それをふまえて損得なしで付き合っているところに人間らしさを感じるんです。

 登場人物が中年の設定なのも、私にはすごく共感できます。ラストのセリフのやりとりは、まるで人生のよう。うまくいっているように見える人でも、全部自分の思い通りに進んでいないんですよね。人生の後半にいる人間が「他に何もない!」と言って突き進むところが、しみじみと、しみるんです。中年に元気をくれます。

聞き手・渋谷唯子

 

  監督・共同脚本=エドガー・ライト
  製作=英
  出演=サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、デビッド・ブラッドリーほか
うえじ・なおこ
 1966年生まれ。エッセー「九十歳。なにがめでたい」(小学館)の装画や、童話「くろねこのどん」(理論社)の絵などを手がける。
(2019年1月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)