舞台は米ニュージャージー州の街、パターソン。地名と同じ名前の主人公パターソンは、バスの運転手をしながら、素敵な奥さんや犬と暮らしている。毎朝ほぼ同じ時間に起きて仕事に行き、家に帰って奥さんと話し、夜は犬の散歩がてら行きつけのバーに寄る。そんな毎日の繰り返しの中で彼は詩を書いています。
パターソンは奥さんから「詩を世に出すべきだ」と言われる。でも本人は「詩人として活躍したい」という気持ちよりも、あくまで「バスの運転手」として仕事に誇りを持ちながら、生活の中で生まれてくる言葉や思いを詩にすることの方が大事みたい。
僕は窯元の家に生まれて、家業を継ぐと決めたけど、周りから等身大の自分より大きく捉えられたり、自分でも欲が出て背伸びしてしまったり……。着物を何枚も着込んでしまったようで、最近は少し重いなと感じることがあったから、パターソンが日々の営みの中で純粋に芸術を紡ぐ姿にグッときたのかも。
パターソンのように毎日働いて、自然に営みを続ける人々の姿は美しく尊い。自分も美しい風景の一部でありたいと思う。犬と散歩したり、妻と過ごしたり、そんな時間を大事にしながら「茶わん屋」として何かを残していけたらいいな。
映画の中で印象的なのが、彼の詩の題材になった青いマッチ。僕の絵でもマッチを並べて映画に出てくる重要なシーンを表現してみました。皆さん、これは何に見えますか?
聞き手・笹木菜々子
監督・脚本=ジム・ジャームッシュ
製作=仏・独・米
出演=アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏ほか かみで・けいご
1981年生まれ。九谷焼窯元・上出長右衛門窯の6代目にあたる。5月2日~5日、石川県能美市の窯元の駐車場で「窯まつり」を開催。 |