第2次世界大戦によって引き裂かれた男女の物語。ジョバンナとアントニオはナポリの海岸で出会い、愛し合って結婚するけれど、アントニオはイタリア軍に徴兵されて、対ソ連戦線に送られてしまい、大戦後も行方が分からない。実は戦場の過酷な体験によって記憶を失い、助けてくれたロシア娘と結婚し、現地で暮らしていたんです。
僕の故郷、沖縄でも、地上戦によって記憶をなくした人がいた。人は生命の危機に陥ったときに、体の装置がショートするような現象が起こるみたい。だからアントニオの境遇もあり得るだろうな。
この映画の冒頭とラストに登場するひまわり畑が、ずっと記憶に残っています。幹が太くて花が人間の顔くらいでかいひまわりが、広大な空間に咲いている光景が強烈で。中盤、アントニオを探しにソ連に来たジョバンナを、役人がひまわり畑に案内して、「(畑の下には)イタリア兵、ロシア人、ドイツ人が埋まっています。無数のロシアの農民や老人、女性、子どもも」と言う。すると、ひまわりが人間っぽく思えてきて。
ひまわりって実が成熟すると重みが増して垂れてくるけど、後ろから見ると、うなだれた人間が立ってるようでおもしろい。明るく力強い背後に深い悲しみを感じます。僕は気がつくと今までにひまわりの絵を100枚くらい描いてきた。歓喜する生と、どうしようもない悲哀や死が隣り合わせているような絵を描きたいと思うんです。
聞き手・上江洲仁美
監督=ビットリオ・デ・シーカ
製作=伊・仏
出演=ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニほか なか・ぼくねん
1953年、沖縄・伊是名(いぜな)島生まれ。3月29日~7月15日に沖縄・北谷町のボクネン美術館で個展「異郷の風」を開催。 |