僕の漫画家デビューは25歳。漫画雑誌「ガロ」(2002年休刊)でした。高校生の頃に一度、ガロに持ち込みをして、当時の編集長に「映画を見て話作りの勉強をしなさい」と言われ、1~2年ほど映画を見まくりました。そんな時期にこのSFファンタジー映画と出会ったんです。
主人公はイギリスの住宅街で両親と暮らすケビン少年。親子関係はあまり良くない。ある夜、少年の部屋のクローゼットから6人のこびとが現れる。彼らは仕えていた神様から時空を超えるための地図を盗み、様々な時代に現れて盗みを働こうとしていた。ケビンも一緒に冒険の旅に出ます。
ナポレオンやギリシャ神話の英雄に出会ったり、タイタニック号に乗り込んだり、目まぐるしく旅する。後半は地図を狙う魔王と戦いになり、どうしてもかなわない。そんな時に神様が現れます。面白いのは、神様は社長風のスーツ姿で、資本主義の権化といった感じ。圧倒的な力で魔王を倒し、至って事務的に全てを解決してしまう。一生懸命積み上げた物語が一瞬で投げ捨てられたような、ジェットコースター的な展開です。
戦いが終わって現実世界で目覚めたあと、ラストシーンにはびっくり。僕はハッピーエンドと捉えましたが、世間では様々な解釈があるみたい。
わくわくする話だなと思いつつも、子ども向けにしては毒があって、大人が見れば子どもっぽい気がして、そのあいまいな感じがすごく好き。僕が描いてきた漫画も、大人と子どもの間の仕上がりになっている。今回映画を見直して、僕の原点だと改めて思いました。
聞き手・笹木菜々子
監督=テリー・ギリアム
製作=英
出演=クレイグ・ワーノック、ショーン・コネリー、イアン・ホルムほか もと・ひでやす
1969年生まれ。95年、漫画家デビュー。レコードレーベル「雷音レコード」主催。新作漫画「あげものブルース」(亜紀書房)が発売中。 |