映画の舞台となったロンドンと、公開当時、私が住んでいたダブリン。どんよりとしたグレーの空と街の雰囲気が重なる。親近感が湧いた映画でした。
1960年代にロンドンで実在した双子のギャング、クレイ兄弟の生き様を描いた物語。商才があり、ダンディーで人気者の兄レジーと、暴力的で周りから恐れられている弟ロン。2人は手段を選ばない方法で街の権力を握っていく。しかし、レジーが部下の妹フランシスと結婚したことからロンとの関係が悪化。兄弟の絆はしだいに壊れていく。
目を見張ったのは、一人二役を演じたトム・ハーディの兄弟げんか。ビンタ連発、かみつき、突き飛ばし。全力を尽くした激しいシーンに、一瞬目を覆いたくなりましたが、ドラムの音が小気味よく流れて爽快な気分に。
イラストに描いたのは、レジーと「悪」の道を突き進むロンとの固い絆。「善」を象徴する「純白」のドレスを着たフランシス。フランシスは仕事人間のレジーから相手にされなくなり、愛想が尽きて別れても、もがき苦しむ態度は見せない。違和感がありました。こんなきれいで物わかりのいい態度がとれるのかと。そんな彼女が自ら命を絶ったのは、心底愛する気持ちを断ち切りたかった。解決策だったんでしょうね。
全体的に演出も重くなくて、テンポも良い。そして、スタイリッシュ。バイオレンス映画ですが、暴力的というより、深刻な人間関係や複雑な心理が描かれている作品だと思いました。
(聞き手・陣代雅子)
監督・脚本=ブライアン・ヘルゲランド
製作=英・仏
出演=トム・ハーディ、エミリー・ブラウニングほか ごとう・みわ
パリ在住。広告、テキスタイルなど幅広く手掛ける。現在、パリのショコラティエとのコラボレーションでお菓子のパッケージを制作中。 |