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ニシワキタダシさん(イラストレーター)
「ペーパー・ムーン」(1973年)

子供心が垣間見える二人旅

ニシワキタダシさん(イラストレーター) 「ペーパー・ムーン」(1973年)

 1930年代、大恐慌の頃のアメリカが舞台。詐欺師のモーゼは事故で死んだ恋人の葬式で、彼女の娘のアディに出会い、アディを伯母の家まで送り届けるために2人は車で旅をします。

 アディは9歳なのに大人びていて、たばこも吸うし、詐欺の手助けもする。モーゼを本当の父親かもしれないと思い、顔が似てるのではないかと積極的に言う。一方、モーゼは独り身の自由さもあって本当の親子だと認めません。欲望のままに生きている。でもどこか憎めないのは、もうけようとしても、人を傷つけようとはしないからかもしれません。演じているのは本当の親子。僕は娘がいるので特に感情移入しました。アディが一生懸命に階段を上る姿すらもグッときましたね。

 旅の途中に寄った移動遊園地で、題名の由来でもある、紙でできた三日月に座って記念撮影できる場所が出てきます。アディは一緒に撮ろうと誘うけど、モーゼはショーを見たくて断ります。父親かもしれない人と写真を撮りたい気持ちが伝わってきて、子供らしさを感じられるシーン。結局アディだけで撮ったけど、いつか2人で撮れたらいいなという思いでイラストを描きました。

 子供の頃から映画館に行く習慣があまりなく、映画といえばテレビ放送される王道の作品がほとんど。この作品も笑いや、ハラハラするところ、感動する場面もあり、誰もが楽しめるような作品です。映画に限らず、人を楽しませたいという気持ちを作品から感じた時は、自分もイラストで人を楽しませたいと前向きな気持ちになります。

(聞き手・伊藤めぐみ)

 

  監督=ピーター・ボグダノビッチ
  製作=米
  出演=ライアン・オニール、テイタム・オニールほか
ニシワキタダシ
  書籍や広告のイラスト、グッズ制作などを手がける。近著に「くらべる・たのしい にたことば絵辞典」(PHP研究所)。
(2019年11月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)