ドイツの舞踊団を率いた振付家で舞踊家のピナ・バウシュを、この映画で知りました。コンテンポラリーダンスに縁は無かったのですが、好きなベンダース監督のドキュメンタリーだったので映画館へ。ピナの4作品と団員たちの語りや踊りで淡々と進むところが気に入りました。見る側がどう受け取っても自由な気がして。とても感激して、映画のチラシを今も仕事場に貼っています。
ダンスの動きは、美しくて不思議。時にユーモアも感じます。日常にはないような動きなのに、なぜか日常とつながっているようで、想像力をかき立てられます。映画の公開は、ピナが急逝した後。舞台を見ることができず、残念です。
印象深いのは、列をなしたダンサーが、季節の変化をジェスチャーで表しながら進む場面。腕を曲げてブルブルと震わせる「冬」の表現には、親近感が湧きました。このダンスは複数回登場します。終盤、小高い丘のような場所で、遠景からダンサーの列を捉えた構図は見応えがありました。
映画で、ピナが「言葉で表現するのではなく、特別な何かを感じてもらうのがダンスの出発点」と語っていますが、言葉にしなくても伝わることがあると思います。ダンスは理屈抜きで、説明のつかないところが面白い。私も絵本をつくる時、お話の筋とは別に、何だか笑っちゃうような仕掛けを意識します。例えば、擬人化した城が登場する絵本の主人公は「おしろ」と「おくろ」で、語尾は「じょう」。声に出すと、言葉の響きが楽しくなるように考えます。ダンスと同じく、音読も身体表現ですね。
(聞き手・木谷恵吏)
監督・脚本=ビム・ベンダース
製作=独・仏・英
出演=ピナ・バウシュ、ブッパタール舞踊団のダンサーたち まるやま・さとし
ヤッホーブルーイング(長野県)のクラフトビール2ブランドのパッケージイラストを担当。絵本「ノブーナガ」(絵本館)が2月刊行。 |