数多くの報道写真家が作品を発表した米国のフォト・ジャーナリズム雑誌「ライフ」。その出版元で写真整理係として働く妄想癖のある主人公が、最終号の表紙を飾る写真のネガの在りかを知るカメラマンを捜す過程で予想外の事態に巻き込まれ、人生を一変させていく物語です。
映画で描かれるタイム・ライフ社のスローガンにビビッときました。「……TO SEE BEHIND WALLS, TO DRAW CLOSER,(壁の裏側をのぞこう もっと近づこう)……」なんて、今の時代はあまり言わないだろうけど、それぐらいのハングリー精神で行った方が人生は楽しい。そういう思いを伝えたくて絵本を描き始めたという初心を、このスローガンがズバッとクリアにして再確認させてくれました。
「人生」っていうテーマを真面目に映画で語っても多分伝わりにくい。だけど、この映画はさらりとした笑いがたくさん織り込まれていて、観客を引き込む中でテーマが伝わってくるのが好きです。音楽もかっこいい。泥酔した操縦士が飛ばすヘリコプターに主人公が意を決して飛び乗る場面でデビッド・ボウイの「スペース・オディティ」が使われていて、曲の世界観が映画にぴったり。
今回描いたのは、物語の途中で訪れるアイスランドの火山帯。美しく荒涼とした景色が見る人に自分との対話を突きつけ、印象的でした。この場面のスローガン「TO SEE THE WORLD(世界を見よう)……」は、自分を高みへ導いてくれる道しるべ。そういう風になりたいと、自分の身に引き寄せて共感できた映画です。
(聞き手・小松麻美)
監督=ベン・スティラー
製作=米
出演=ベン・スティラー、ショーン・ペン、クリステン・ウィグほか すずき・のりたけ
1975年浜松市生まれ。近著に「やっぱり・しごとば」(ブロンズ新社)、「へんがおたいそう」(NHK出版)ほか。 |