カルト映画と言えば「エル・トポ」というくらいのザ・カルト。学生時代からそういう類いのものへの憧れはあったけど、地方だからレンタルビデオ屋にそんなレアな映画は置いていなかった。高校卒業して漫画家デビューが決まって上京して、やっと好きなものが見られるぞ、と。
初見の感想は、ビジュアルショック。それまで自分の知っていた映画の文法やセオリーも全く通じず、次に何が起こるか予測できませんでした。
こうもり傘をさした黒ずくめの主人公が、裸の子どもと一緒に馬に乗って登場。砂漠を旅しながら4人の達人を倒していく、一種のロードムービーです。盲目のヨガ行者やライオンを連れた極度のマザコンなど、達人たちのキャラが立っていて、哲学的。そしてすごくかっこよく登場した主人公が、めちゃくちゃ卑劣な手段で達人たちを倒していくんです。何を見せられているのかなって気持ちになります。
不条理で分かりにくい映画と言われていますけど、そもそもは女の人に「達人を倒して最強になって」と言われて倒しに行く、少年漫画みたいな展開。ストーリー自体はシンプルなんです。魂の遍歴みたいな宗教的な話で、神聖なものと俗なもののごちゃ混ぜをダイレクトに脳に見せられる。トランス的な映像体験に立ち会えます。
見ると疲れます、この映画。でも、すごく混沌とした今の世の中、逆にあえてぐったりするものを見てリセットするのもありかも。自分では表現できないもやもやを映像で見せてくれて、これでいいんだって元気が出ます。
(聞き手・安達麻里子)
監督・脚本・主演・音楽・美術・衣装=アレハンドロ・ホドロフスキー
製作=米・メキシコ
出演=ブロンティス・ホドロフスキーほか あまひさ・まさかず
1968年香川県生まれ。代表作に「バカドリル」。オリジナルステッカーなどを扱うオンライン店舗「来夢来人ストアーズ」を運営。 |