初めて見たのは15歳の頃。作りものの映画の中の世界なのに、その物語を登場人物と一緒に経験するように見た気がします。年齢的にもそんな風に見ることができた最後の映画だったんじゃないかな。優しく、気持ちよく映画にだまされるというか。大人になる前に見られてよかった。
仲間と地球の植物の調査に来て、1人取り残されてしまった異星人E.T.と、少年エリオットの交流が描かれます。とにかく全部のシーンが好き。構図も照明の色も、時々使われる白いスモークも美しい。外国の町並みや散らかった子ども部屋のおもちゃ、ピザの箱や冷蔵庫の中の食べ物など、出てくるものすべてにわくわくしました。
E.T.の描き方がたまらなくチャーミング。チョコを拾い集めてエリオットに近づいてきたり、おもちゃの山に紛れ込んで隠れたり。
数年前まで、1年の最初に必ず見ていました。実は今でもちょっと本気でE.T.が来てくれるのを待っています。
僕は神戸のはずれで育ったのですが、小学校高学年の頃から1人で電車に乗って映画を見に行くのが好きでした。途中の須磨駅には線路脇に大きな映画の看板があって、それを車内から見るのも楽しみで。「E.T.」の看板は、異星人と子どもの手が指先を近づけている印象的なビジュアルでした。映画にはそのシーンはないけど、内容をイメージで表現するとああなるんだなと子ども心に理解した気がします。仕事として絵で表現するってことに興味を持ったルーツかもしれないですね。
(聞き手・牧野祥)
監督=スティーブン・スピルバーグ
製作=米
出演=ヘンリー・トーマス、ディー・ウォーレス、ドリュー・バリモアほか しもだ・まさかつ
1967年兵庫県生まれ。本の挿絵や、キャンバス地を使った恐竜の頭のかぶり物などを制作。近刊に絵本「死んだかいぞく」など。 |