ニューヨークで繁盛するイタリアンレストランの一夜が舞台。サスペンスや人間ドラマが詰まった群像劇で、繰り返し見たくなる作品です。
昔気質のオーナーの父と人気シェフの息子の対立を軸に、ギャンブル中毒の副シェフや店員の恋愛事情、店を乗っ取ろうとするマフィアの来店と様々な人間模様が交錯し、事件が起きる。撮影の舞台はレストラン経営者でもある監督のお店なんですよ。厨房の映像は臨場感にあふれています。
この映画は自分にとって記憶の再生装置。僕、人生で一番つらいときにニューヨークへ行ったんです。初個展の売り上げを画商に全部持ち逃げされた直後でした。人種のるつぼの街で、価値観も美意識も違う人々からエネルギーをもらった。作中でも、慣れない地で孤高に働くウェートレスにひかれました。一筋縄ではいかない登場人物たちを見る度に、エリート意識が高くてせわしないけど人間くさい、ニューヨークの空気感がよみがえります。意外な結末も、あの街ならあり得そう。
独創的な料理を作るシェフの息子が好きですね。自信家だけど常に何かに追われているような焦燥感もあって共感できる。画家も生活の保障はなくて毎日が戦いですから。辛口評論家の批評を受ける彼らのレストランのように。
絵には銃を忍ばせました。強調しなかったのは、作中で殺人はメインディッシュではない気がしたから。大忙しの店では殺人すら一晩の一つの出来事として消化されてしまう。ドライでスケールが大きいのもやっぱりニューヨークらしく、不思議な魅力を感じる映画です。
(聞き手・星亜里紗)
監督=ボブ・ジラルディ
製作=米
出演=ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニほか なかじま・けんた
1984年生まれ。写実的な描写で「完売画家」とも呼ばれる。情報番組「グッとラック!」(TBS系)にコメンテーターとして出演。 |