水仙に黒なんてあったかしら……。タイトルにインパクトを感じたのは初めてでしょうか。
舞台はヒマラヤのへき地。5人のイギリス人尼僧は地元の子どもたちを教育するため、生活環境が異なる地に赴任する。リーダーに抜擢されたクローダーは、他の4人をとりまとめ、尼僧院を軌道にのせようとするが、彼女たちの信仰心はゆらいでいく。人間の奥深い心理が描かれています。
デボラ・カー演じる尼僧クローダーを見ると、昔の自分を思い出しますね。彼女は世のため、人のためと、女性や子どものための学校や医療施設も併設して奉仕活動に精を出すんです。信仰心があつく、生真面目な彼女は様々な出来事に対処しますが、ときに心が疲れることも。学生時代、先生たちから「真面目で、融通が利かない」と言われていた私も、母が創設した洋裁学校の後継者として「人の上に立つには、皆に愛されるためにはどうあるべきか」などと思い悩みました。ブライダルビジネスを始めたときは和装が主流で、「世情に反する」と関連業界からバッシングを受け、心が傷ついたことも。今思えば、その経験が自分を強く、大きく成長させてくれたんでしょうね。
イラストに描いた花は、映画のタイトルとなった黒水仙。汚れのない「白」の服をまとう尼僧に「黒」の誘惑が忍び寄る。常に潔白な心でありたいと思っているのに、邪悪な色に染まってしまいそうな不安を覚える尼僧たちの心のあり様を一花で表現しました。誘惑に負けない強い心を保つこと、この作品が、その難しさを改めて教えてくれたような気がします。
(聞き手・陣代雅子)
監督=マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
製作=英
出演=デボラ・カー、キャスリーン・バイロンほか かつら・ゆみ
日本初のブライダルファッションデザイナーとして、これまでに国内外30以上の都市でショーを開催。2019年に文化庁長官表彰。 |