米ヒューストンの大手石油会社が、英スコットランドの美しい海岸に石油コンビナート施設を建設しようと、海沿いのひなびた村に社員を派遣する。用地買収という社会派になりがちなテーマなんですけど、村の人たちは反対するでもなく「やったー、お金が入る」という感じで、見ている側の予想を裏切るところが面白い映画です。
日本公開は1986年。バブルの声が聞こえ始めたかなあという頃で、その翌年にはフリーランスになってすぐの私などにもリゾート関係のパンフレットの依頼がくるほどでした。ただ自然が好きでリゾート開発には疑問があったので、不成立に終わりましたが。映画を見に行ったきっかけは、大好きなミュージシャンのマーク・ノップラーが音楽を担当していたからなんですが、内容が時代の気分に合致していたように思います。
この映画の底に流れているものはオフビートというか、とぼけた感じなんです。村の人たちは善良で世俗的。いくらもらえるのか心配したり、ロールスロイスを買えば羊を運べると話したり。石油会社の社員マッキンタイアは天文オタクの社長の命令で公衆電話から夜空の様子も報告します。
説明過多でないのもいいですね。マッキンタイアが現地社員と海を見ながら「いいところだ」と話す場面では、頭上を爆音で演習の戦闘機が飛んでいく。現実もちゃんと見せつけます。自然をいとおしく思い始め、村の人とお酒を酌み交わすマッキンタイアの心の変化が身なりからうかがえるのも憎い。小さな謎もちりばめられていて、いろいろ想像して楽しめます。
(聞き手・牧野祥)
監督・脚本=ビル・フォーサイス
製作=英
出演=バート・ランカスター、ピーター・リガート、ピーター・キャパルディほか ひらの・えりこ
1961年生まれ。暮らしや着物、山歩きなどについてのエッセーも手がける。近著に「あのころ、うちのテレビは白黒だった」(海竜社)。 |