大阪のミニシアターで5回も見たんですよ。長時間じっとしていることが苦手なこの僕が、高校時代、食い入るように見た映画。ここまで魅了された作品はほかにないんじゃないかな。
ストーリーの大筋は、長いこと外界との関わりを断って音楽史編纂に没頭していた教授が、流行の音楽を奏でるミュージシャンたちに出会うというもの。改めて見ると十五、六歳の青年にとっては刺激的な内容や場面があるんです。でも、当時の僕はそんなものの意味がよく分からなかった。それよりも興味をそそられたのは1940年代に活躍したジャズミュージシャンたちの演奏シーン。スイング・ジャズの代表的存在として知られるクラリネット奏者のベニー・グッドマン、サッチモの愛称で知られるトランペット奏者のルイ・アームストロング、白人バンド・リーダーの開祖といわれるサックス奏者のチャーリー・バーネット。次から次へと超一流ミュージシャンが登場して演奏する様に気持ちがどんどん高ぶっていく。それまではレコードから流れる音楽しか聴いたことがない、ジャケットでしか顔を見たことがない彼らの動く姿が目の前にあるんですから無理もありません。新たな音楽史編纂のため、一堂に会してジャム・セッションするところなんて豪華なコンサートを見ているようで心が震えましたよ。今思い返しても本当に貴重な映像だと思います。
そんな当時を思い出しながら描いたイラストは大好きなグッドマンのクラリネットをはじめ、印象に残ったミュージシャンの楽器。今にもセッションが始まりそうでしょ。
(聞き手・陣代雅子)
監督=ハワード・ホークス
制作=米
出演=ダニー・ケイ、バージニア・メイヨ、スティーブ・コクランほか いしづ・しょうすけ
1935年生まれ。日本メンズファッション協会常務理事。アパレルのブランディングや衣食住関連の企画などに携わる。 |