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石原詢子(歌手)
「魔女の宅急便」(1989年)

寄り添え合える喜び 一層強く

石原詢子(歌手)「魔女の宅急便」(1989年)

 宮崎駿さんの映画が好きで、ほとんど全部見ていますが、その中でも断トツで好きなのが本作です。公開されてすぐ見に行って、何度か映画館に通ったのを覚えています。ちょうどデビューの翌年でした。その後も、テレビで放送される度に見ています。主人公キキのように空を飛べたら、大好きな猫と会話ができたら、なんて思いながら。

 一番のお気に入りは、キキが親元を離れて、猫のジジを連れて空へと飛び立つシーン。故郷の岐阜を離れて、1人で憧れの東京に出てきた時の思い出と重なります。両親や友人たちに後ろ髪を引かれながらも、新しい土地への夢や希望が詰まっていて、大好きなシーンです。

 この映画をどうイラストで表現しようかと考えた時、シルエットがいいのでは、と思いついたんです。もう一つの大好きな映画「E.T.」のように、大きな月に姿を映したキキとジジの姿を描きました。窓際に座っている2匹は、私が去年の夏から飼いはじめた兄妹猫の「だいず」と「きなこ」。キキとジジの関係のように、私にとってかけがえのない、大切な友人であり家族です。

 この映画を見ると、人や動物のぬくもりが感じられるんです。今、困難な状況の中で、映画で描かれているような大切な人との触れあいが難しくなってしまいました。だからこそ、家族でも友人でもペットでも、大切なあなたがそばにいてくれたら、それだけでうれしい、ありがとうと伝えたい。5月発売の新曲にもそんな気持ちを込めて、聞いて下さる方に優しいメッセージを届けたいですね。

(聞き手・高田倫子)

 

  原作=角野栄子
  プロデューサー・監督・脚本=宮崎駿
  音楽=久石譲
  声の出演=高山みなみ、佐久間レイ、山口勝平ほか
いしはら・じゅんこ
 1968年生まれ。88年CBSソニーからデビュー。紅白歌合戦に2度出場。5月19日「ただそばにいてくれて」を発売予定。
(2021年3月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)