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きくちゆうきさん(漫画家・イラストレーター)
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(2014年)

批判にもめげない、SNSが時に救いに

きくちゆうきさん(漫画家・イラストレーター)「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(2014年)

 「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブローが監督と脚本、製作、主演を務めているということで、興味を持ちました。

 ファブローは、ロサンゼルスにある有名レストランの総料理長カールを演じます。創造的な料理を作りたいカールは、定番メニューに固執するオーナーと対立し、店を辞めることに。さらに、自分の料理を酷評した評論家とけんかになり、その様子がSNSで拡散されてしまい、料理人として窮地に立ちます。心配する元妻と訪れたマイアミで、キューバサンドイッチのおいしさに感動して心機一転。息子や元同僚とフードトラックでキューバサンドイッチの移動販売を始めます。

 ただ自分の作りたいものを追求しているだけで、周りから好き勝手言われてしまったカールに、自分の姿が重なりました。2019年末からツイッターで漫画「100日後に死ぬワニ」の投稿を始め、たくさんの人に読んでもらいました。しかし、書籍化や映画化などが発表されると、「大手広告会社が仕組んでいたのでは」といううわさがSNSで広がり、批判を浴びました。

 世間から批判されても、カールは料理を諦めません。SNSを通じてキューバサンドイッチの評判が広がり、いつしかトラックの前には大行列が出来るまでに。SNSは人を傷つけることもありますが、勇気づけることもあります。作品づくりをしていると、つらい時も訪れます。でも、目標を持って続けていけば、「つらいことも必要だったな」と思える日が来るはず。そんなことを学んだ映画です。

(聞き手・永井美帆)

 

  監督・脚本・主演=ジョン・ファブロー
  製作=米
  出演=ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソンほか
きくち・ゆうき
 1986年東京都生まれ。「100日後に死ぬワニ」を原作としたアニメーション映画「100日間生きたワニ」が5月28日公開予定。
(2021年4月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)