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いわいとしおさん(絵本作家・メディアアーティスト)
「未知との遭遇」(1977年)

自分の中の「子ども」 エネルギーに

いわいとしおさん(絵本作家・メディアアーティスト)「未知との遭遇」(1977年)

 少年時代、親友と映画館へ見に行った思い出の映画です。同時期にスター・ウォーズも見て、どっちが好きか?論争になり、迷った末に僕はこの映画を選んだ記憶があります。おとぎ話的なスター・ウォーズもいいけれど、ごく普通の家族が日常の生活の中で突然不思議なものと出会う、そのリアリズムがたまりません。

 人類と宇宙人のコンタクトを描いたSF映画です。主人公のロイは謎の停電事故を調査中、不思議な光を発するUFOを目撃します。ロイの他にも各地でUFOに出会った人たちがいて、共通したイメージを頭の中に焼き付けられてしまい、それが何なのかを探し始める。

 ロイが何かにとりつかれたように頭に浮かんだ岩山の模型を作り始める様子は、ちょっと自分にも通じるものを感じます。僕も夢中になってものを作るときって、どこからか急にイメージが降ってきたり、誰かに作らされたりするように感じることが結構あるんです。ロイは大人だけど子どもっぽい純真さを持っていて、宇宙人に選ばれる。僕も自分の中の子どもをエネルギーにして、絵本を作っている。似ているなって思います。

 この映画の宇宙人が子どもっぽく描かれているのも好きですね。急に電化製品が動き出したり光ったり、ちょっと怖い部分はあるけれど、子どものいたずらだと思うと納得できます。僕ら人類だけでなく、宇宙人も未知なるものへの好奇心を持っていて、お互いがドキドキしながら出会う。僕が絵本で描こうとしている世界とすごくつながるなって思いますね。

 

(聞き手・小松麻美)

 

  監督・脚本=スティーブン・スピルバーグ
  製作=米
  出演=リチャード・ドレイファス、フランソワ・トリュフォーほか
いわいとしお
 1962年、愛知県生まれ。主な著書に「100かいだてのいえ」シリーズがある。最新刊は5月21日発売の「もりの100かいだてのいえ」(偕成社)。
(2021年5月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)