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デヴィ・スカルノさん(タレント)
「終着駅」(1953年)

10代に見た恋物語 今も色あせず

デヴィ・スカルノさん(タレント)「終着駅」(1953年)

 たった数時間の愛の物語をビットリオ・デ・シーカ監督が美しく切ない1時間半の映画にしています。夫と娘がいる米国人のメアリー・フォーブスが、姉のいるローマへ旅行し、そこで教師ジョバンニに出会い、夫も娘も忘れてしまうほどの狂おしい恋に落ちます。

 私が感心したのは、男女の運命的な出会いと、恋した女性、相思相愛の表現です。彼女がどれぐらいうろたえ、夫と彼の愛のはざまで動揺しているか。ジョバンニと線路をはさんで、お互いの目と目が合うところは感動的です。

 最初に映画を見たのは、まだ10代のころで、新聞や雑誌の広告で知りました。お友達とお食事しながら、ストーリーを話し合いました。当時はすごく有名な映画でしたよ。

 メアリーは本当に美しい。彼女は、ワンピースに小さな帽子をかぶるシックな装いで、立派な毛皮のコートを持っています。ファッションから上流階級ということが分かります。絵は、映画を通しての印象を思い出して描きました。

 映画のもうひとつの見どころは、いろいろな人が駅にいて、その様子が映し出されているところです。大統領、女好きの男性、軍服の兵隊たち、たくさんの荷物を持たせて悠々と歩く裕福な女性、英国の炭鉱での出稼ぎが無くなり帰国した貧しい家族など、1950年代のイタリアの世相がよく分かります。駅の待合室も1等と3等で、全然違うのが面白かった。千差万別の人たちが入り乱れ、それぞれの人がその人生を語りかけてくれます。

(聞き手・栗原琴江)

 

  監督=ビットリオ・デ・シーカ
  製作=米・伊
  出演=ジェニファー・ジョーンズ、モンゴメリー・クリフトほか
デヴィ・スカルノ
 インドネシア元大統領夫人。優秀な演奏家を発掘する「イブラ・グランド・アワード・ジャパン」(8月30日~9月2日、東京・紀尾井ホール)を開催。
(2021年6月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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