ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」と聞いて、これまで見てきた彼の作品から、ハリウッド映画だし、恐怖映画やパニック映画の王道を行くような作品だろうという先入観でこの映画をみたんですが、どっこい、裏切られました。
タイタニックはそれまで、悲惨な海難事故や豪華客船の宝探しなど、様々な切り口で語り尽くされてきました。しかし彼はこの映画で、3時間の壮大な「人情噺」を語ったんだな、と思うんです。
上流階級で抑圧され、望まない結婚を控えたローズが、貧乏画家のジャックと船上で出会い、恋に落ちます。ほんの短い間でしたが、ここで育んだ愛が、生き残ったローズのその後の人生を大きく変えた、という映画です。
映画では、階級社会による差別が色濃く残る当時の世相と華やかな船内や氷山衝突後の混乱などを時間をかけて丁寧に描いています。年老いたローズの枕元に、彼女自身の若い頃の写真が並ぶシーンが終盤にあります。これが落語でいうオチ。ローズがジャックに出会い、導かれるように自ら切り開いた人生を、印象強く語るためです。鑑賞者は、くどくど説明されずに、ローズの人生が分かる。それまでのシーンが、このオチのために全部必要だったんだな、と思わせます。本当に心地よく受け止められる良いオチ。やはり自分は映画にもオチを求めてしまうようで。
描いたのは並んだ写真からの一枚で、今まさに飛ばんとしているローズを、古びた写真のように仕上げました。
(聞き手・鈴木麻純)
監督・脚本=ジェームズ・キャメロン
製作=米
出演=レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレットほか とうりゅうてい・しかご
1994年に立川談志に入門。99年に漫画家デビュー。昨年、登龍亭獅篭に改名。ユーチューブ「登龍亭TV」を開設。 |