舞台は近未来。この世は仮想現実の世界で、本当の世界では知能と意志を持ったコンピューターが人間を支配しているという設定です。人間を解放するため、二つの世界を行き来し機械と戦うのは救世主として選ばれたネオ、トリニティー、モーフィアスたち。英語でトリニティーは「三位一体」。イラスト左の3人は彼らで、輪郭にはコンピューター言語を象徴する数字を使いました。
シリーズ中、機械が起こした戦争によって世界は雲で覆われ、暗い場面が多いのですが、3作目の本作では光のシーンが印象的。敵陣の中枢部を目指すネオとトリニティーは、到達の直前、雲上で遮るもののない太陽の光を見ます。ネオは内通者に目をつぶされるのですが、見えないはずのネオには光が透けるように世界が見える。闇の世界にいる彼らが見た光を描きたかったんです。
右側は無数に増殖するネオの宿敵、スミス。2人はあらゆるものが持つ二極性の象徴です。善悪、明暗。共存し、均衡を保つものですよね。
10代の頃は斬新なアクションやカメラワークにひかれましたが、コロナ禍の今見返すとセリフの一つ一つが刺さりました。スミスとの戦闘シーンで、劣勢でもくらいつくネオ。なぜそんなに戦うのかとスミスに問われ、「選択したからだ」と答えます。ネオは自らの選択に責任を持ち、向き合うことで真の救世主になっていくんですね。私たちも実は、あふれる情報の中から自分で答えを選びとって生きている。自分の選択で生きる。見えないものを見る。生きることの本質を描いた映画なんだと気付きました。
(聞き手・山田愛)
監督・脚本=ウォシャウスキー姉妹
製作=米
出演=キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー・アン・モスほか すずき・あん
1987年東京生まれ。26日までBunkamuraシアターコクーンにて、井上ひさし作、蜷川幸雄オリジナル演出の舞台「ムサシ」に出演。 |