映画館で一度見ただけなのに印象に残っていた作品です。あらためて見直してみても、笑えるシーンがたくさんあって元気になれて、明日も頑張ろうと思えるハッピーな内容が大好きです。
ロバート・デ・ニーロ演じる70歳のベンは、定年退職後を悠々自適に過ごす一方で物足りなさを感じていて、社会の役に立ちたいとファッションサイト会社のインターンに応募します。彼がどんな人生を歩みどんな経験を積んできたのか詳しく描かれていなくても、一つ一つの言動や持ち物から伝わってくるのがこの作品のすごいところ。まさに、人生100年時代をどう楽しんで生きるかの理想形をベンが体現してくれているようです。
アン・ハサウェイが演じる40歳も年の離れた社長のジュールズや同僚の若者たちに対しても、年代や役職で垣根を作らずに、決して相手を否定しません。ジュールズの悩んでいる姿をそっと見守ってきたベンが、「一生懸命頑張ってきた人だから幸せになってほしい」と心に寄り添うセリフが一番グッときました。お互いがほんわり包み合うような温かなコミュニケーションが、ナチュラルに描かれているのが魅力です。
ベンが長年勤めたオフィスの窓から何を見て、今いる場所からどんな景色が見えるのか。何をどう見るか、自分の視点や心がけ一つで人生は全く違うものになってくると思うんです。窓にステンドグラスをイメージして描いたのは、物語を彩った幸せなアイテムたち。一番右下の空いた部分には、映画を見た人が感じた何かを自由に映してもらえたらうれしいです。
(聞き手・斉藤由夏)
監督・脚本=ナンシー・マイヤーズ
製作=米
出演=ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ、レネ・ルッソほか ばば・のりこ
2015年から大阪芸術大学放送学科教授。NHK「あさイチ」、BS日テレ「歌謡プレミアム」、TBSラジオ「GIFT~未来への贈り物~」などに出演。 |