オーストラリアの広大な大地をミッチ、バーナデット、フェリシアの3人のドラァグクイーンが中古のバス「プリシラ号」に乗って旅するロードムービーです。見た後に希望を感じる物語で、砂漠の中の道なき道を行く様子が今の世の中とリンクしている気がします。
ミッチがショーパブで音楽に合わせて披露する「I’ve Never Been To Me(邦題:愛はかげろうのように)」。3人の状況を言い当てたような歌詞が印象的で、映画の冒頭からいきなり心をつかまれます。観客からヤジを飛ばされたり空き缶を投げられたりしてさんざんだけれど、このワンシーンのおかげで彼女たちの境遇を理解した上で物語に入っていけました。
言いたい放題でけんかばかりの珍道中。でもそこが爽快で、ただ一緒にいるだけで成り立つ「うそのない関係性」がいいですね。私も子どもの頃に国際交流で海外へ行き、高校や大学ではユニークな環境でさまざまな人に出会いました。そういう経験もあり、そもそも人と人は違うからわかり合えなくて当然だと思うし、人と違うからって悩んだことはあまりないですね。
ビーチサンダルをつなげたドレスなど、際立つ色合いと斬新なデザインの衣装も好き。イラストはそんな3人の華やかさと、仕事で日々作っているお弁当を合わせて表現しました。
もし今、砂漠にいるみたいに孤独なら「『プリシラ』を見て!」って薦めたい。どうにもならないときは3人のように音楽をかけて踊れば、きっと前向きになれると思います。
(聞き手・片山知愛)
監督・脚本=ステファン・エリオット
製作=豪
出演=テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィービング、ガイ・ピアースほか おおいし・まりこ
1986年、大阪府出身。大学卒業後、広告制作会社、建築事務所員兼カフェ店長を経て、2017年ケータリング「アホウドリ」設立。 |