読んでたのしい、当たってうれしい。

現在
63プレゼント

穂坂麻里さん(デザイナー・イラストレーター)
「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年)

細部まで面白い サービス精神満載

穂坂麻里さん(デザイナー・イラストレーター)「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年)

 インドの大地主に仕える召使ムトゥと、旅一座の女優ランガとの恋を軸にした、歌とダンスが見どころの映画です。

 初めて見たのは小学生の頃。踊っているシーンがほとんどで、ストーリーもよく分からないうえに2時間46分もあって長い。それなのに、ものすごくひきつけられて、作品の舞台であるインドに憧れを抱きました。その後も、インド映画を色々と見ましたが、本作ほど印象に残る作品には、いまだに出会えていません。

 とにかく見た人に楽しんでほしい、というサービス精神で埋め尽くされた映画です。とくにダンスシーンは、主役の2人と、そんなに必要?と思うくらい大勢のバックダンサーが、香辛料のような強い香りを放っていて、中毒性が高く魅力的です。大地主の婚約者である女性の「しゃっくり」音をビートにして、屋敷中の人が踊る盛大なダンスシーンも見どころです。その婚約者の父親は典型的な悪役で、ボンネットに大きなツノをつけた車に神妙な面持ちで乗り込むシーンは、思わず笑ってしまいます。細部まで丁寧に作り込まれていて見どころが多く、それぞれが見つけた面白いポイントを教え合って笑うのも、楽しみ方の一つだと思っています。

 イラストの中央には、序盤、こちらに駆け寄ってくるムトゥの「ドヤ顔」を描きました。作品内で何度も登場するダジャレをイメージした「マッテーナ」や、しゃっくり「ヒャッ!」を、周囲のイラストに溶け込むよう、ヒンディー語風のカタカナで表現してみました。

(聞き手・高田倫子)

 

  監督・脚本・セリフ=K・S・ラビクマール
  音楽=A・R・ラフマーン
  製作=インド
  出演=ラジニカーント、ミーナほか
ほさか・まり
 1988年、神奈川県生まれ。「うんこドリル」(文響社)、「松丸亮吾のうんこナゾトキ」(同)シリーズほかのイラストを担当。
(2021年12月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)