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合田里美さん(イラストレーター)
「踊る大捜査線 THE MOVIE 2レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年)

組織で生きる葛藤 熱い約束信じて

合田里美さん(イラストレーター)「踊る大捜査線 THE MOVIE 2レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年)

 同タイトルのテレビドラマを映画化した作品です。ドラマも見ていましたが、1998年公開の劇場版第1作を、中学校の行事で映画館へ見に行き、「こんなに面白かったんだ」と。それから、はまってしまいました。

 劇場版2作目にあたる本作は、主人公の青島をはじめとした警察官が、お台場にある湾岸署管内で起きた複数の事件を解決するストーリーです。

 数多くの登場人物の中でも、私はとくに警視庁に所属する室井に共感しました。上司と部下の板挟みにあって苦悩する姿や、組織の中で意思に反した行いを強いられるというジレンマに悩む姿を見て、応援したくなるからです。

 この映画の見どころの一つは、所轄と本庁の警察官が共に同じ現場で活躍するシーンです。室井が、かつて青島と交わした「現場が動きやすい警察組織を作る」という約束を思い起こさせる場面でもあり、胸が熱くなりました。

 本シリーズは、長い年月をかけて数多くの関連作品が発表されていますが、その間、作品の中でも時間が流れていて、いつの間にか登場人物が成長して昇進していたり、知らない事件を解決していたり。まるで私たちと同じ時を過ごしているように感じられて、もしかしたら、お台場で彼らは本当に生活しているのではないかと錯覚してしまうくらいです。きっと今でも、室井と青島は顔を合わせることもなく、それぞれ別々の現場で活躍しているのでしょう。姿は見えなくても、お互いを信じて支え合っているのではないかと思い、背中合わせの姿を描きました。

(聞き手・高田倫子)

 

  監督=本広克行
  脚本=君塚良一
  出演=織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリアほか
ごうだ・さとみ
 1984年、兵庫県生まれ。装画や文芸誌の挿絵を担当。近著に谷川俊太郎作「闇は光の母」シリーズ3「ぼく」(岩崎書店)。
(2022年2月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)