人気恋愛小説家のメルビンは、実生活だと神経質で毒舌をはいてばかりの偏屈な嫌われ者。そんな彼がカフェで働くシングルマザー・キャロルへの恋や隣人との交流を通じて少しずつ変わっていく物語です。
高校生の時に、あらすじも知らずになんとなくレンタルしたんです。主人公はとにかく嫌なやつ。でも、憎めないというか、むしろありのままの素直な行動に序盤からぐっと見入ってしまいました。玄関の戸締まりを何度も確認したり、手を洗う度に新品のせっけんを使ったり……。さすがに僕はそこまでこだわりの強い日常生活は送っていませんが、横断歩道の白い部分だけを歩くところなんか、やりたくなる気持ちもわかりますよね。
旅先でメルビンとキャロルが2人でディナーに行くシーンがとてもよくて、今まで見てきた全部の映画のなかで一番好きな場面です。メルビンがキャロルに言う「いい人間になりたくなった」というせりふは、飾らない彼だからこそ出てきた言葉だと思うんですよね。直前までの険悪な状況をひっくり返す一言に、見てるこっちが「きまったー!」とガッツポーズしちゃいそうになります。その後またひっくりかえるんですけど(笑)。
自分がネタをするようになってから思うのは、メルビンの職業が恋愛小説家じゃなかったら、あの言葉は出てこないだろうなということ。物語自体には恋愛小説家があまりからんできませんが、人の気持ちを害してばかりのメルビンが不意に素敵なせりふを言っても不自然に思わせない、うまい設定だなって思います。
(聞き手・伊東哉子)
監督・共同脚本=ジェームズ・L・ブルックス
製作=米
出演=ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハントほか なかの・しゅうへい
お笑いコンビ「蛙(かえる)亭」を2012年に結成。オールナイトニッポンPODCASTで配信中のニッポン放送「蛙亭のトノサマラジオ」は毎週[火]更新。 |