高校生の頃、地元の映画館で見ました。精神的にズシンと響く内容に、衝撃を受けました。
ブラッド・ピット演じる新人刑事と、モーガン・フリーマン演じるベテラン刑事が、連続殺人事件の犯人を追い詰めていきます。舞台となる街はずっと雨が降っていて雰囲気も暗く、猟奇的な殺人の様子はホラーに近い。
そんな中、捕まった犯人の指示で刑事2人は砂漠にやってきます。するとそれまでの陰鬱(いん・うつ)な雰囲気から一転。どピーカンの夕景の中、物語はクライマックスを迎えます。美しい景色と、その場所で起きる凄惨(せい・さん)な出来事とのギャップがあまりに印象的でした。絵はそのシーンです。
衝撃的な内容と独特の映像技術は、当時、先駆けの映画でした。「銀残し」という技法が使用されていて、この作品以降多くの映画で使われています。僕にとって、作品のルック(世界観)を初めて意識した作品です。「この画(え)はどうしてこういうふうに撮ったんだろう」と、カメラマンの仕事に興味を抱いたきっかけとなりました。
今まで見てきた映画や経験してきたことは、僕の血となり肉となっているはずです。積み重ねた美意識が作品に反映されると良いなと思います。そして普段から、作品に合った撮影を意識しています。映像が先行して物語がついてこない状況を作ってはいけない。「セブン」は、ストーリーと撮影のバランスがマッチしていると思います。
撮影というものを意識した最初の映画。「これを見なかったら今はどうなっていたのかな」という気は、ちょっとしますね。
(聞き手・田中沙織)
監督=デビッド・フィンチャー
製作=米
出演=ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトローほか やまだ・こうすけ 1976年福岡県生まれ。
「シン・ゴジラ」(2016年)で日本アカデミー賞最優秀撮影賞。他に「羊と鋼の森」(2018年)など。 |