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山田康介さん(撮影監督)
「セブン」(1995年)

世界観と映像技術 やがて僕の血肉に

山田康介さん(撮影監督)<br>「セブン」(1995年)

 高校生の頃、地元の映画館で見ました。精神的にズシンと響く内容に、衝撃を受けました。

 ブラッド・ピット演じる新人刑事と、モーガン・フリーマン演じるベテラン刑事が、連続殺人事件の犯人を追い詰めていきます。舞台となる街はずっと雨が降っていて雰囲気も暗く、猟奇的な殺人の様子はホラーに近い。

 そんな中、捕まった犯人の指示で刑事2人は砂漠にやってきます。するとそれまでの陰鬱(いん・うつ)な雰囲気から一転。どピーカンの夕景の中、物語はクライマックスを迎えます。美しい景色と、その場所で起きる凄惨(せい・さん)な出来事とのギャップがあまりに印象的でした。絵はそのシーンです。

 衝撃的な内容と独特の映像技術は、当時、先駆けの映画でした。「銀残し」という技法が使用されていて、この作品以降多くの映画で使われています。僕にとって、作品のルック(世界観)を初めて意識した作品です。「この画(え)はどうしてこういうふうに撮ったんだろう」と、カメラマンの仕事に興味を抱いたきっかけとなりました。

 今まで見てきた映画や経験してきたことは、僕の血となり肉となっているはずです。積み重ねた美意識が作品に反映されると良いなと思います。そして普段から、作品に合った撮影を意識しています。映像が先行して物語がついてこない状況を作ってはいけない。「セブン」は、ストーリーと撮影のバランスがマッチしていると思います。

 撮影というものを意識した最初の映画。「これを見なかったら今はどうなっていたのかな」という気は、ちょっとしますね。

(聞き手・田中沙織)

 

 監督=デビッド・フィンチャー
   製作=米
   出演=ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトローほか
やまだ・こうすけ 1976年福岡県生まれ。
 「シン・ゴジラ」(2016年)で日本アカデミー賞最優秀撮影賞。他に「羊と鋼の森」(2018年)など。
(2022年10月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)