ひとりの若者vs.暴走族・政治結社のバトルを描いたSFバイオレンス・アクション。特攻隊長の仁さんが、右手脚を失っても、愛するバイクで幻の街サンダーロードを突き進む。泣けるところや、ふと笑えちゃうシーンもあって。人生がつらくなったときや、進むエネルギーがなくなったときに見ると魂が震えるんです。
仁さんを助けるスーパー小学生、ツッパリの小太郎さんを描きました。名前が「こたお」なので、ちょっとシンパシーもあって。心に住まわせたいキャラクターですね。かっこいいけど、にこって笑うとすっごいかわいい。自分の心の中の小太郎さんにフォーカスして、じわっとにじみ出る渋さ、良さをあえて粗っぽく仕上げました。
「正しいもの」「きれいなもの」がすべてじゃないなって思うんです。解像度が低い方が感性豊かに受け取れることもある。監督が22歳で自主制作したこの映画も、リマスターされても良い粒子の粗さを味わえますし。98分間、ラストの0.1秒まで「わりと意味不明」の連続ですが、そこもいい。口の動きとアテレコは合ってないし、シーンが替わったらケガが治っちゃって、小林稔侍さんの登場シーンもわけわかんない。めちゃくちゃなんだけど、そうじゃなきゃ嫌だって感じる。私となんら変わらない年齢でこんな作品を撮ってたなんて、監督には震え上がる思いです。私の油彩画も、うまいとか、きれいとか言われますが荒々しく突っ走ってるだけ。仁さんと一緒ですね。この映画のパンク精神は原点になっています。
(聞き手・島貫柚子)
監督=石井聰亙(現・岳龍)
音楽=泉谷しげる、PANTA&HAL、THE MODS
出演=山田辰夫、南条弘二、小林稔侍ほか ともざわ・こたお
1999年フランス生まれ。東京・吉祥寺育ち。東京芸大大学院在籍。2019年久米賞、21年上野芸友賞を受賞。インスタグラムは@tkotao。 |