映画を知ったきっかけは、アンソニー・ホプキンスです。彼が認知症を患った老人を演じる「ファーザー」という作品を見て、なんだこの人はと思い、そこから興味をもって他の出演作品を見るようになりました。
この映画はアンソニーが演じるバートが常に愛されているという印象です。自身が改造したバイクで当時の世界最速記録をたたき出すまでのプロセスを描いています。でも、なんでこんなに人に愛されるんだろうって思って。見てると助けたいと思うんですよね。バートの一つ一つの言葉、行動、全てが、「そうだよね、そんな感じだったらおせっかいしたくなっちゃうよね」という気持ちにさせます。アンソニーの芝居に説得力があるんです。
芝居って、頭とか体とかで作り込みつつ、現場にあるセットやロケーションの中で生まれた感情や演技を組み合わせていく作業だと思うんです。その中で、役者を見る目は、共演しているほかの役者それぞれによって違う感情がのると思ってて。でも、この映画では、みんなバートを演じるアンソニーを同じいい顔で見ていた印象です。
僕自身も芝居をするのですが、せりふをそのまま言ったり、ただ困っている感じを出せばいいっていうもんじゃなかったりする。街の人との会話、ちょっとした視線、言葉の動き……そんなことを強弱や速さで素晴らしく表現していますよね。アンソニーと芝居するのは楽しそうだなと思います。きっとにじみ出る人柄に引っ張られて、刺激されるんじゃないかな。
(聞き手・中山幸穂)
監 督=ロジャー・ドナルドソン
制作国=ニュージーランド・アメリカ
出 演=アンソニー・ホプキンス、クリス・ウィリアムズほか みずかみ・こうし
1999年生まれ。2018年に俳優デビューし数々の映像作品に出演。ドラマ「真夏のシンデレラ」に出演中。 水上恒司 オフィシャルサイト |