読んでたのしい、当たってうれしい。

現在
49プレゼント

河野ルルさん(絵描き)
「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」(1995年)

 旅の途中、メキシコで宿代の代わりに壁画を描いたことをきっかけに、国内外の学校や公共施設で壁画を描いています。海外へ描きに向かう飛行機の中で、この映画を初めて見て好きになり、帰りの便でもう一度見ました。

 アメリカから来たジェシーと、フランスから来たセリーヌ。電車の中で出会った2人が途中下車をして朝まで歩きながら語りあいます。本当のカップルのアドリブのような会話がずっと続くんです。続編も含めとてもリアルで、普通の映画とはひと味違う。旅先での出会いにドキドキするところは共感しました。

 カフェでセリーヌが「初めから彼と下車するつもりだった」と友達に電話をするフリをして告白するシーンで、ジェシーの一方的な一目ぼれではなく、お互いひかれていたことがわかります。その伝え方のセンスの良さにも感心しました。この場面をイラストで表現しています。

 連絡先はあえて交換せず、半年後に同じ場所での再会を約束して別れます。この作品の中では再会できるか分からず、余韻が残ります。

 2人が直感を信じて途中下車したように、私も旅するときは自分の勘を大事にしています。できる限りガイドブックは持たず、旅先で出会った人の誘いに付いていったり、その場で決めたりすることがほとんどです。

 この一日の出来事が、後に2人の人生を大きく動かしていきます。それだけ強烈で濃い出来事に巡り合えるのは、うらやましいですね。

 

(聞き手・深山亜耶)

 

 監督・共同脚本=リチャード・リンクレイター
   製作国=米
   出演=イーサン・ホーク、ジュリー・デルピーほか
こうの・るる 
  1987年、名古屋市生まれ。2016年から国内外で壁画などを描く。 
  5~17日、名古屋市のアートスペースエーワンで個展を開催。

  ◆河野ルル インスタグラム
  https://www.instagram.com/lulu_kouno/

(2023年9月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)