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可哀想に!さん(イラストレーター・アニメーター)
「哭声/コクソン」(2016年)

これ、本当に見ていいものなの?

可哀想に!さん(イラストレーター・アニメーター)<br>「哭声/コクソン」(2016年)

 韓国の山深い村に、よそ者の日本人がやってきたあと、村内で次々と起こる不可解な殺人事件。果たして誰が、何が引き起こしているのか……最後まで目が離せない作品です。

 たまたまBSで放送していたのを両親と一緒に見て、ひき込まれました。とにかく國村隼さん演じる「日本人」が、めっちゃ良い。彼が上半身裸に裸足、ふんどし一丁で暗い森の中にたたずんでいるシーンをイラストにしました。
「これ、本当に見ていいものなの?」と不安に思うくらい異質で、印象に残った場面です。最初はこんなに異様な格好をして走り方まで気持ち悪いのに、その後は服を着て帽子までかぶって、まるで普通の人みたいな姿に。そのうえ、崖で主人公ら警官に追い詰められるシーンでは顔をゆがめて怖がっていて。次第に「実は可哀想な人だったのでは……」と思いはじめました。

 彼以外にも真犯人とおぼしき怪しい女性やキノコなどが登場しますが、明確な答えは最後まで明らかにされません。それなのに「おもろい」。理解できないのに面白い、という感想を抱いた映画は、この作品が初めてです。
よくあるホラー映画のように「ドカーン!」と大きな音が鳴って驚くようなシーンはありませんが、見終わったあと、しみじみと怖くなりました。

 同じくらい大好きな映画、アリ・アスター監督の「ヘレディタリー/継承」を見た時にも感じたのが、とにかく「気味悪い」。
 でも、その気味悪いのが好きなんです。

(聞き手・高田倫子)

 

 

 
 

 監督・脚本=ナ・ホンジン

 製作国=韓国

 出演=クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒほか

 

 かわいそうに! 
 「おぱんちゅうさぎ」「んぽちゃむ」などのキャラクターを生み出し、SNSを中心に活動中。

 

 

 

 

(2023年10月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)