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伏木明臣さん(グラフィックデザイナー・イラストレーター)
「ゴーストワールド」(2001)

10代の進路 悩みにセリフに共感

伏木明臣さん(グラフィックデザイナー・イラストレーター)<br/>「ゴーストワールド」(2001)

 ぜひ中高生に見てほしい映画です。私がこの作品と出会ったのは、専門学校に通っていた10代の頃。それから繰り返し100回は見ているかも知れません。もっと早く出会いたかったと思うくらい大好きな作品です。


 主人公は、高校を卒業したばかりのイーニドと、彼女の親友レベッカ。仲良くフラフラと過ごしていた2人ですが、次第にそれぞれの進路を考えるように。黒髪にメガネ姿、奇抜なファッションのイーニドは、いつも堂々としていて言葉の選び方が斬新、頭の回転も速い。私も当時進路に悩んでいて、「一日中会社で働くのは、おかしくなりそう」という彼女のセリフに共感しました。

 

 最終的に彼女はバス停からどこかへ旅立ちますが、実はその後しれっと戻ってきて、また父親と不満だらけで暮らしているのでは、と思っています。自分と同じところで立ち止まっていた彼女だけ幸せになっていたら、落ち込むので……。

 

 あらためて見直すと、レコード好きな中年男性のシーモアに感情移入する部分も。人づきあいが苦手な彼は、レコードなどモノを集めることでそれをごまかしている。私も同じように、映画のDVDや本、パンフレットなどで部屋があふれかえっているので、似ているなと気づきました。

 

 みな個性的で、イラストに盛り込みたい登場人物がたくさん。中でもシーモアは特徴的な顔をしているせいか、描くのに時間がかかりました。画材は油性の色えんぴつ。芯が軟らかくて、粉っぽい質感、強く滑らかに塗れるところが気に入っています。

(聞き手・高田倫子)

 

 

 
 

 監督=テリー・ツワイゴフ

 製作国=米国

 出演=ソーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソン、スティーブ・ブシェミほか

 

 ふしき・あきおみ 
 1996年生まれ。東京出身。桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン専攻卒業。
 インスタグラムは@akiomi.f

 

 

 

 

(2023年11月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)