「作りもの」っぽい映画が好きです。この作品もレトロな音楽にのせたオープニングクレジット、そして実在する人物のドキュメンタリーのようなインタビュー映像から始まります。
一見だらしがなくてダメな人だけど、腕のよいギター弾きの主人公。「父親に虐待を受けていたけど、母親の歌う歌が好きだった」と漏らす場面があります。改めて見たとき、主人公を形作った理由だと気がつきました。人と向き合うことから逃げ、音楽に没頭し、お酒に頼らないと「自分を続けられなかった」のだと思うのです。
主人公があるウソを信じて逃げ惑い、偽札製造のアジトに突っ込むシーンをイラストにしました。そこで得た偽札で欲しかった車を手に入れてしまう、「出来事のおかしさ」を表現しました。都合のよいことが起こって解決するのは「作りもの」らしい展開ですが、でも現実は意外とそういうものかもしれません。私自身、住居トラブルでしんどい思いをしていた二十代のころ、たまたま誘われて応募した広告賞で最高賞をとり、賞金で引っ越して一気に解決したことがありました。その頃に見た「ギター弾きの恋」は、自分の出来事と重なって特別な映画になっています。
日頃、失敗して落ち込むことが多いので、主人公の「ダメさ」に対するこの映画の肯定の仕方に共感してしまうのかもしれません。みんな何かしらダメな部分を抱えて生きていると思いますが、こういった映画の存在が立ち直らせてくれるし「それでも日々は続くよ」と、元気をもらえる気がします。
(聞き手・深山亜耶)
監督・脚本=ウディ・アレン
製作国=米国 出演=ショーン・ペン、サマンサ・モートン、ユマ・サーマンほか
よこやま・ゆう 1988年、東京都生まれ。本の装画やデザイン、美術館展覧会のアートディレクションなどを手掛ける。全国各地で個展も。
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